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猫の乳腺腫瘍

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


猫の乳腺腫瘍の症例について、紹介したいと思います。


猫の乳腺腫瘍とは

犬と異なり、猫では乳腺にできた腫瘍の多く(85%程度)が、悪性と言われています。

発情周期を繰り返し、乳腺が性ホルモンの影響を受けて腫瘍が発生することが示唆されており、若齢時の避妊手術によって発生率を低下させることができます。


触診など身体検査、レントゲン検査、エコー検査、細胞診、血液検査などTNM分類とステージングを行い、局所の評価と領域リンパ節(鼠径リンパ節と腋窩リンパ節)、遠隔転移(肺、正中腸骨リンパ節など)など評価し、進行度を把握します。

また、病理組織診断を行い、悪性度を評価します。


治療は、外科切除(乳腺の拡大切除、全摘出)と化学療法(ドキソルビシン、cox-2阻害薬など)の有効性が示唆されています。


外科切除合併症には、感染や術創の癒合遅延、離開があります。

とある報告によると、両側性乳房切除術を段階的な方法で実施することで無増悪および疾患特異的な生存期間を改善し、合併症の発生率が低下する可能性があります。

(合併症率は、片側乳腺全摘出で19.7%、2週間程度空けて片側ずつ行う段階的両側乳腺全摘出で35.7%、一回での両側乳腺全摘出で40.6%程度、無増悪生存期間の中央値は、片側乳房切除術を受けた猫(289日)よりも両側乳房切除術を受けた猫(542日)の方が長かった)


予後の指標として下記が挙げられます。

腫瘍の大きさ:3cm未満で21-24ヶ月、3cm以上で4-12ヶ月

ステージ:StageⅠで29ヶ月、StageⅡで12.5ヶ月、StageⅢで9ヶ月、StageⅣで1ヶ月


ここで症例を紹介します。

症例:猫(マンチカン)、12歳、未避妊♀、2.4kg

主訴:両側第4-5乳腺に多発性に腫瘤(最大で2.3㎝大)ができ、一部自壊している

触診上、領域リンパ節の腫脹は認められない

レントゲン検査:明らかな転移所見は認められず

エコー検査:正中腸骨リンパ節腫大認められず、肺エコーではBライン等異常認められず


血液検査:スクリーニング検査では特に異常値は認められず


仮診断:乳腺腫瘍


治療:外科切除段階的両側乳腺全摘出と卵巣子宮摘出)


病理組織診断:乳腺癌、鼠径リンパ節内に一部転移病巣あり、脈管浸潤なし、サージカルマージン良好 ⇒ T2N1M0 ステージ3


この猫ちゃんは性格がおっとりしており、とても治療に対する許容性がよく、治療は順調です。今後は再発・転移を抑制するため、術後化学療法を検討する必要がありますが、できる限りサポートして元気に長生きして欲しいと思います。


以上、猫の乳腺腫瘍の紹介でした。

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