犬の膀胱腫瘍と化学療法
- ハーブ動物病院スタッフ 
- 10月1日
- 読了時間: 2分
更新日:2 日前
こんにちは。
ハーブ動物病院です。
今回は、犬の膀胱腫瘍について紹介します。
犬の膀胱腫瘍とは
犬の膀胱腫瘍の多くは、膀胱の粘膜から発生する悪性腫瘍である移行上皮癌です。
尿道など周囲組織への浸潤性やリンパ節等他の組織への転移性が共に高く、悪性腫瘍の中でも悪性度が高いです。
膀胱三角という膀胱と尿管開口部に発生しやすい傾向があり、腫瘍によって閉塞されてしまうと、腎臓から産生された尿が流れなくなり、水腎症となり、命に関わる状態になります。
症状は、血尿や頻尿など非特異的な症状から始まり、徐々に食欲低下、体重減少等、体調悪化が続きます。
診断は、超音波検査、x線検査、尿検査、細胞診、BRAF/MEK遺伝子変異検査、CT検査、血液検査を行います。
治療は、化学療法、外科療法が主にあります。
外科療法は、一般的に転移がない孤立性の悪性腫瘍に対して適応されます。
膀胱尿道全摘出術では、合併症が多く、最終的には細菌感染による腎盂腎炎が起きてしまう問題があります。
化学療法は、従来からカルボプラチン、ビンブラスチン、cox-2阻害薬が用いられてきましたが、近年では分子標的薬であるラパチニブ、モガムリズマブによる治療効果も期待されています。
ここで症例を紹介します。
症例:犬、mix、避妊♀、14歳、4kg
主訴:健康診断で偶発的に膀胱腫瘤を認めた
検査:エコー検査や尿検査、細胞診、BRAF/MEK遺伝子変異検査等を行い、異型性のある上皮系細胞集塊とBRAF変異が認められた
仮診断:移行上皮がん(膀胱三角部に発生、尿道への浸潤も疑われれる)
治療:化学療法(カルボプラチン、ラパチニブ、モガムリズマブ、cox-2阻害薬併用)
症例は、一般状態もよく、治療効果増強を期待して、報告には未だないカルボプラチン、ラパチニブ、モガムリズマブによる多剤併用化学療法の治療計画を立てました。
単剤から併用していき有害事象を各々慎重に評価しながら治療を進めました。
治療継続中ですが、部分寛解を維持しながら、軽度の好中球減少症のみで、特に大きな合併症もなく、生活の質を向上できています。
おそらく腫瘍細胞の耐性によるものと思われますが、完全寛解が得られない場合にどの程度維持できるかと、新薬の有効性に期待したいと思います。
以上です。











