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犬の急性膵炎と重度の胃拡張

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は犬の急性膵炎に合併した重度胃拡張について紹介します。


急性膵炎とは

膵臓には、消化酵素を含む膵液を十二指腸へ分泌し、食べ物の消化を助ける働きと、インスリンなどのホルモンを血管へ分泌し、血糖値を一定濃度にコントロールする働きがあります。

膵臓に炎症が起きると、隣接する他の臓器にまで影響を及ぼし、食欲不振、吐き気、腹痛、黒色便などを引き起こします。状態が悪化すると、意識障害やショック状態など重症化することもあります 。

治療は、絶飲食による膵臓の安静と、十分な量の輸液療法、鎮痛剤、制吐剤を用います。 その後、低脂肪食による食事療法を行います。


胃拡張とは

体液またはガスによる胃の著しい膨満が見られる緊急的な状態です。

進行すると胃拡張・胃捻転症候群(GDV)という致命的な病態になり得ります。

大型犬、胸の深い犬種、一回当たりの食事量、食後の激しい運動、消化管蠕動運動の異常などがリスク因子としてあります。

胃拡張・胃捻転症候群(GDV)は、消化器障害(胃の壊死、イレウスなど)、心血管系の障害(ショック、不整脈、血栓症など)、呼吸器障害(呼吸運動の低下、誤嚥性肺炎など)など全身性炎症反応症候群から多臓器不全へ陥りやすい極めて危険な状態となります。

そのため、早期発見・早期治療が重要です。

初期症状では、ショックと胃減圧のための治療が必要です。

胃捻転が認められれば、迅速に手術を行い、胃の位置の整復と胃固定、脾臓など周囲臓器の状態をチェックします。


ここで症例を紹介します。

症例:ミニチュア・ダックス、14歳、♂、3.8kg

主訴:朝からお腹が張って苦しそう、吐き気があるが、吐かない


X線検査:重度の胃拡張と異常な量の消化管ガス陰影を認めた


血液検査:電解質(NaKCl)の重度低下、ALT軽度上昇、cPL陽性(膵炎)


診断:急性膵炎と重度の胃拡張


治療:エコーガイド下で針穿刺による胃ガスの抜去、入院下で輸液、抗炎症薬と制吐薬投与、安静と絶食で経過観察


x線検査(24時間後):異常認められず

捻転が確認されれば直ちに外科的整復を行うことを前提としていましたが、この症例は幸い、胃捻転を発症しておらず、胃ガスを抜去後、急速に改善し、手術することなく翌日に退院し、膵炎の通院治療を行った後、無事元の生活に戻ることができました。


今回は急性膵炎を発症した後、消化管の蠕動運動能が低下したことによってイレウスが起き、胃拡張が起きたと推察しますが、明らかな原因は不明です。

以上です。

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