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犬の急性膵炎と胆嚢切除

更新日:2021年7月17日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は犬の急性膵炎と胆嚢切除について紹介します。

術中写真があります。苦手な方はご注意下さい。

胆嚢は、胆汁を貯蔵濃縮する肝臓の袋で、食物が十二指腸に流入すると、胆嚢が収縮して胆汁が胆管を介して十二指腸に流出します。胆汁は脂肪を消化する役割があります。

膵臓は、脂肪を分解する膵液を膵管を介して十二指腸に分泌したり、インスリンなどのホルモンを血管へ分泌したりします。

胆管と膵管は、十二指腸乳頭という同じ場所に開口し、解剖学的に近接しているため、影響されやすい関係にあります。例えば、胆石によって膵炎が引き起こされたり、膵炎によって胆管狭窄や胆管炎が起きたりします。


ここで、症例を紹介します。

症例:チワワ、11歳、避妊メス、3kg

主訴:嘔吐と元気・食欲消失


血液検査:v-LIP:1000U/L、ALT:>over、ALP:>3500U/L、T-Bil:0.7mg/dL、CRP:>7.0mg/dL


エコー検査:膵臓左葉低エコー性、周囲組織高エコー性に腫大、胆嚢重度拡張、右腎嚢胞を認め、総胆管の拡張や胆石、腹水は認められなかった


診断:急性膵炎とそれに伴う重度の肝障害


治療:急性膵炎と肝障害の内科治療

内科治療は、脱水やショックを防ぐ目的とした輸液に食事制限(絶食または低脂肪食)、制吐薬、鎮痛薬などの対症療法が主な治療となります。

合併症のない急性膵炎では、多くが内科治療で対応可能です。


この症例は、重度の肝障害も併発しており、胆嚢も重度に拡張しているので、急性膵炎による胆管狭窄によって、胆嚢破裂が起きないか治療中も慎重にモニターする必要があります。


経過は、治療反応に乏しく、軽度の黄疸とわずかに高エコー源性の腹水を認め、部分的な胆道閉塞や腹腔内への胆汁漏出なども考えられることから、胆嚢摘出を検討し、飼い主様とご相談の上、実施しました。


治療:胆嚢摘出

全身麻酔下で腹腔内を精査したところ、特に穿孔部位等はなく、腹水は出血性でした。

おそらく膵液漏による腹膜炎とそれに伴う微小出血が原因と思われます。

胆汁漏出や総胆管閉塞等は認められませんでしたが、やはり胆嚢は重度に拡張していたため、胆嚢を摘出しました。

重度に拡張した胆嚢を認めました。

胆嚢を肝臓から剥離し、胆嚢管から結紮離断して胆嚢摘出しました。

胆汁を穿刺抜去後に摘出した胆嚢。


術後2日目で黄疸が進行しましたが、その後改善、元気食欲も戻り、退院となりました。

人でいう胆嚢摘出後症候群にあたるのかもしれません。

今後は元の生活に戻れると思われます。


ちなみに、胆泥症などの胆嚢疾患は無症状の場合が多いですが、胆嚢破裂や総胆管閉塞などは治療を行なっても予後が悪い場合もあり、予防的に経過観察し、食事管理する必要があると思われます。


以上です。

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