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犬の原発性上皮小体機能亢進症

更新日:2020年8月2日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、犬の原発性上皮小体機能亢進症について紹介します。

原発性上皮小体機能亢進症とは

上皮小体(副甲状腺)からパラソルモンというホルモンが過剰に分泌され、血中カルシウム濃度が上昇し、多飲多尿や食欲低下、腎結石、膀胱結石などを引き起こします。


パラソルモンの作用:骨からCaを吸収、腎臓からCaの排泄抑制、小腸からCaの吸収促進によって、血中カルシウム濃度が上昇


診断は、血液検査、視診、触診、エコー検査等を行い、除外診断と腫大した上皮小体結節を確認します。

治療は、内科治療(輸液、プレドニン、フロセミド、カルシトニンなど)や外科治療(上皮小体を甲状腺ごと一括して切除)や経皮的エタノール注入療法があります。



ここで症例を紹介します。

症例:ミニチュアダックスフント、13才、避妊メス

主訴:元気・食欲低下

身体検査:重度の歯周病

血液検査:Ca:14.5mg/dL↑、CRP:>7.0↑


胸部X線検査:著変認められず


エコー検査:右側上皮小体5mm大に腫大(1箇所)、胆泥貯留、軽度の三尖弁閉鎖不全症(TR:216cm/s)


診断:原発性上皮小体機能亢進症、重度の歯周病

高Ca血症を引き起こす疾患はいくつかあり、全身を精査する必要があります。

今回の症例では上皮小体が腫大していたため、上皮小体機能亢進症が疑われましたが、腎機能に問題がないことから原発性上皮小体機能亢進症と診断されました。


治療:腫大した単一の上皮小体に対する経皮的エタノール注入療法

全身麻酔下にて短時間で行うことができます。

エコーガイド下で腫大した上皮小体に注射針を穿刺(下記のエコー画像)し、エタノールを注入します。

治療成績も外科切除と比べて劣らないという報告があり、より低侵襲に行えるメリットがあります。場合により複数回の治療が必要になります。

ごく稀ではありますが、腺癌であれば、不向きの治療法となります。

今回は、併発していた重度の歯周病に対する歯石除去、左前頭部にできた腫瘤の切除も同時に実施しました。


術後4日目の血液検査:Ca:11.2mg/dL

術後は3日前後から低カルシウム血症になる可能性もあり、入院下で充分なモニターが必要ですが、この症例は基準値範囲内で落ち着き、無事退院しました。

今後は無治療経過観察を行い、値が安定すれば、高カルシウム血症による神経症状などの問題はなくなります。


術後1か月の血液検査:Ca:10.6mg/dL

術後も特に高Ca血症は再発は見られず、食欲・元気も良好でした。


余談ですが、経験上原発性上皮小体機能亢進症と診断した犬種はミニチュアダックスフントがほとんどでした。関係あるかはわかりません。


以上、犬の原発性上皮小体機能亢進症についてでした。

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