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犬の卵巣遺残症候群

更新日:2022年5月23日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は犬の卵巣遺残症候群について紹介します。

術中写真を掲載しています。苦手な方は注意して下さい。


卵巣遺残症候群は、避妊手術をしたにも関わらず、発情兆候や偽妊娠、陰部から排膿などがみられる状態です。原因としては卵巣組織が生まれつき正常とは異なる場所にも発生する異所性卵巣や、避妊手術での卵巣の取り残しがあります。

卵巣の取り残しは基本的により頭側で比較的深く位置する右側で起こりやすいと報告されています。

治療としては、卵巣の残存組織の摘出が挙げられます。


ここで症例を紹介します。

症例:柴犬、10歳、避妊♀

主訴:他院で過去に子宮蓄膿症のため卵巣子宮切除をしたが、陰部から数ヶ月周期で排膿がみられる

身体検査:外陰部、乳腺共にわずかに腫脹

この段階で子宮断端膿瘍と卵巣遺残症候群を疑い、性ホルモン検査とエコー検査を行いました。


エストロジェン:51.1 pg/mL(基準値は発情期以外で 25-62 pg/mL)

プロゲステロン:0.32 ng/mL(基準値は避妊♀で <0.7 ng/mL)


エコー検査:右側の腎臓尾側付近に卵巣と思われる組織像を認め、左側は認められなかった

性ホルモン検査でははっきりわからず、診断にはエコー検査がとても有用でした。

飼い主様と相談のもと、当院で残存卵巣組織の摘出手術を行うことになりました。


治療:残存卵巣組織の外科切除

通常の避妊手術と同じようにアプローチしますが、子宮がないので探すのは困難です。

ただ今回はエコー検査で位置を把握していたため、短時間で探すことができました。

電気メスデバイスにより特に出血もなく卵巣組織を摘出できました。

この程度の小さな組織でも、体に影響を及ぼすほどの性ホルモンを分泌しています。

術後の合併症も特になく、今後は他の子と同じように元気に過ごせると思われます。

以上です。

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