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犬の前十字靭帯断裂

更新日:2022年1月8日

こんにちは。

ハーブ動物病院です


今回は、犬の前十字靭帯断裂について紹介します。


前十字靭帯断裂とは

前十字靭帯は、膝関節内の大腿骨の後方から脛骨の前方に位置し、大腿骨に対して脛骨が前方に移動したり、回旋したりすることを制御しており、膝関節の安定性を担っています。

前十字靭帯断裂は、肥満によってリスクが上がり、外傷もしくは変性によって引き起こされます。

膝関節が不安定となると、疼痛による跛行を示し、慢性化すると関節内の半月板断裂やもう片方の前十字靭帯断裂などに併発するリスクがあります。


治療には内科療法(運動制限やサポーター、体重管理、薬による関節炎の治療)と外科療法(TPLO、ラテラルスーチャーなど)があります。

外科療法では、体重増加が手術の合併症に関連すると言われており、肥満などの体重管理はやはり重要です。また、術式における有効性において、TPLO(脛骨高平部水平骨切り術)が最も優れるという報告もあれば、TPLOとラテラルスーチャーとで有効性に差がなかったという報告もあり、小型犬においては、さほど大きくは変わらないと思われます。


ここで症例を紹介します。

症例:トイプードル、9歳、♂、5.2kg、BCS:3.5/5

主訴:ソファから落ちた後、数日間右後肢の疼痛と跛行


触診:右後肢ドロワーサイン陽性、膝関節のクリック音なし


x線検査:右膝関節内の軽度ファットパッドサインと脛骨の前方変位を認めた


診断:右膝の前十字靭帯断裂(外傷性)


治療:内科療法を先行するも改善が乏しく、外科療法(ラテラルスーチャー)を実施

この症例は小型犬であり、シニア期のため、手術侵襲が低い術式で行いました。

ラテラルスーチャー(LFS)は、膝関節の側面から大腿骨の種子骨と脛骨粗面に作成した骨孔に縫合糸を通して結び、安定化させる術式で、比較的簡便で、麻酔時間も短く、手術侵襲は低くなります。

半月板断裂が疑われれば、膝関節を切開して、断裂部分を切除する必要があります。

術後1-2ヶ月後には縫合糸が張力を失い、その間に関節包が繊維化して強度を出す目的で行われ、術後2ヶ月程度は安静に過ごす必要があります。

縫合糸の選択は、組織反応が極めて少なく、柔軟性に富み、高い結紮保持力を有

し、特に強い抗張力を持つことから靭帯の再建、腱縫合等に使用されるポリエステルブレード糸(べアレックス 2号)を用いました。

術後は特に合併症は認められず、術後2日目で歩様が改善、7日目で走り回れるようになれました。


今後は安静に過ごしながら、徐々に元の生活に戻れればと思います。

以上です。

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