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ウサギの精巣腫瘍と腹壁ヘルニア


こんにちは。

ハーブ動物病院です。

今回はウサギの腹壁ヘルニア整復と精巣腫瘍の摘出について紹介します。


※術中写真が掲載しています。苦手な方はご注意下さい。


ウサギの腹壁ヘルニア

老齢性に伴って起きるウサギの腹壁ヘルニアは、位置的に膀胱が脱出しやすくなります。

膀胱が脱出したままの状態が続くと、尿内の結晶成分が沈澱したままとなり、膀胱結石を形成しやすくなってしまいます。

見つかった場合は、なるべく早く外科的に治療する必要があります。


症例:ホーランドロップ、9才4ヶ月齢、オス、1.1kg

主訴:偶発的に精巣腫瘍と腹壁ヘルニアを認めた

既往歴:流涙症(当院で定期的に鼻涙管洗浄で対応)


精巣腫瘍は増大傾向であり、中には転移を起こす場合もあるので、手術をご提案しました。


術前の血液検査:異常認めず

x線検査:腹腔外に膀胱が脱出、膀胱内には結石を複数認めた


治療:精巣腫瘍の摘出と、腹壁ヘルニアの整復手術、結石の除去

鎮静後に膀胱を圧迫すると尿と共に結石が出てきました。

この量だと犬や猫ではまず出てきませんが、ウサギでは不思議と結石を除去することができました。

結石分析:炭酸カルシウム

今後は低カルシウム食を心がける必要があります。


ヘルニア部位へと慎重にアプローチします。

逸脱した膀胱は、周囲組織と癒着しており、慎重に剥離します。


切開と剥離を繰り返し、無事膀胱を整復することができました。

把持している部分が腹直筋で、その間がヘルニア孔となっています。

ヘルニア孔がなくなるように閉創します。


その後、精巣腫瘍の摘出も行いました。

右精巣の萎縮、左精巣が腫瘍化していました。


術後は排便排尿が確認できたため、日帰りで経過観察としました。

二週間後の抜糸も特に問題なく終了しました。

病理検査結果:左精巣のライディッヒ細胞腫(腫瘍脈管浸潤は認められない)、右精巣の萎縮


ウサギの精巣腫瘍の中で最も多いのが、「ライディッヒ細胞腫」です。

一般的に低悪性度の腫瘍のため、手術後の追加治療はない場合がほとんどです。

今後は定期的に経過観察する予定です。


抜糸後にカラーを取ると一生懸命顔を綺麗にしていました。

ウサギの生殖器疾患はメスで多いのですが、オスにもあります。

ウサギは鼠径輪が開存しているため、腹壁ヘルニアに加え、加齢性の鼠径ヘルニアも好発します。

様々な病気を理解した上で、避妊手術や去勢手術を検討することが大切です。


以上です。

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