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執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

猫の胃のリンパ腫

更新日:2022年12月16日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、猫の胃のリンパ腫について紹介します。

猫の胃の腫瘍はリンパ腫が多く、その他に肉腫や腺癌などが報告されています。

胃のリンパ腫を含め、猫の消化管に発生するリンパ腫(消化管型リンパ腫)は、小細胞性の粘膜型T細胞リンパ腫、大細胞性の経壁型T細胞リンパ腫、大細胞性の経壁型B細胞リンパ腫に大まかに分類され、それぞれの生存期間中央値は29ヶ月、1.5ヶ月、3.5ヶ月と予後は大きく異なると報告されています。

胃のリンパ腫は、ほぼ大細胞性の経壁型B細胞リンパ腫です。

診断は、エコー検査やCTなどの画像診断、針生検による細胞診、麻酔下で内視鏡生検もしくは外科的生検で行われます。

治療は主に化学療法が選択され、放射線療法も同等の有効性を示すという報告もあります。



ここで、症例を紹介します。

症例:猫、去勢♂、6歳、3.6kg

主訴:難治性の頻回の嘔吐

この症例はもともと他院で嘔吐に対する内科療法を行い、難治性のためセカンドオピニオンで来院されました。

全身状態として脱水もあり、まずは消化器病を視野にエコー検査と血液検査を行いました。


エコー検査:胃壁(特に粘膜下織)の腫大、胃の周囲のリンパ節軽度腫大を認める

血液検査:貧血、白血球増加、Alb:1.8g/dL↓、FIV/FelV陰性

エコー検査で胃の腫瘍を疑い、針生検による細胞診を行いました。


細胞診:好中球より大きいリンパ球を多数認め、リンパ腫を疑う


確定診断には補助的にクローナリティ検査、麻酔下での内視鏡生検と病理組織診断などが必要ですが、一般状態が良くなく、早急に治療したいとの強いご希望のもと、その日の内に化学療法による入院治療を始めることになりました。


仮診断:胃のリンパ腫(ステージⅡb)


治療:化学療法(L-CHOP療法)

初回導入時は、腫瘍崩壊症候群(K↑、P↑、Ca↓、腎不全など)を予防するため入院下で大量輸液をし、利尿を促すことでそのリスクを大きく下げることができます。

この症例は治療によく反応しました。

エコー検査(治療中):胃粘膜病変は寛解

化学療法開始3日目:部分寛解


化学療法開始4wk:完全寛解


ご家族の積極的な給餌によって一般状態は改善し、削痩していた身体も体重で30%増やす事ができました。

現在は寛解状態のため、治療強度を最大限にして、経過をチェックする予定です。

以上です。

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