犬の脾臓の血管肉腫と輸血

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、犬の脾臓の血管肉腫について紹介します。

術中所見を掲載してます。苦手な方は注意して下さい。


脾臓の血管肉腫

脾臓は、主に大きく感染に対する免疫を担う役割と老化した赤血球を処理したり、貧血時には補助的に造血したりする役割があります。

日本では、犬の脾臓腫瘤のおよそ30-50%が悪性であり、そのうちおよそ50%が血管肉腫と報告されています。

また、良性病変であっても、増大傾向を示し、破裂して腹腔内で大出血を起こすリスクがあります。

治療は、主に経過観察か脾臓摘出を行い、必要に応じて輸血も行います。

脾臓摘出をしても、その後生活する上で大きな支障が出ることはありませんが、免疫能が低下するリスクがあるため、ワクチン接種など感染症予防はしっかり行う必要があります。

ただ、腫瘤が血管肉腫であった場合、一般的に予後は悪く、脾臓摘出のみで生存期間中央値が4ヶ月前後、補助的化学療法で5-7ヶ月前後と言われています。


輸血

輸血は、治療する上で不可欠になる場合があります。

小型犬では当院の看板犬で対応可能ですが、特に大型犬では必要とされる輸血量も多くなり、多くの動物病院では必要十分な血液量をすぐに確保できないのが現状です。

万が一のために、日頃から大型犬の飼い主様同士で協力関係を結び、輸血に対応できるような繋がりを準備しておくとなお良いと思います。

当院では、大型犬の輸血犬を募集しており、ご協力頂いた際には、血液検査による健康診断(無料)やワクチン接種、フィラリア・ノミ・マダニ予防薬(10%off/年)等をプレゼントしています。


ここで症例を紹介します。

症例:ミニチュアシュナウザー、10才、去勢オス、11kg

主訴:急な元気・食欲低下、貧血と脾臓腫瘤(他院で検査)のセカンドオピニオン

他院での検査で既に脾臓の腫瘤が原因である可能性が疑われており、より具体的な治療方針を求め、当院にご来院されました。

当院では、状態確認のため検査を以下の検査を加えて、仮診断を行いました。

血液検査:重度の再生性貧血、ALP:>3500U/L

エコー検査:脾臓に2箇所巨大な腫瘤形成、領域リンパ節や肝臓など転移所見は認めず、腹腔内出血像を認めた

x線検査:肺野に転移所見は認めず


仮診断:脾臓腫瘤の破裂による腹腔内出血

腹腔内出血は脾臓腫瘤の破裂によるもので、出血が止まらない緊急的な状態です。

可能な限り早く、輸血と全身麻酔下での脾臓摘出を行う必要があります。

血圧や意識状態などバイタルサインに問題はなく、術前の一般状態はさほど悪くありませんでしたが、麻酔前の全身状態の評価ではASAclass5/5と高リスク群に分類されているため、注意が必要でした。


治療:輸血と脾臓摘出

当院の看板犬まつりから輸血のための血液採取に協力(※まつりには焼肉をご褒美しました)してもらい、手術前から輸血と輸液を行いました。

脾臓腫瘤は2箇所形成され、破裂部位には大網が覆い被さるように癒着していました。

慎重に癒着部位をシーリングデバイスで処理して、脾臓全体をゆっくり腹腔内から外へと牽引します。

脾臓に関連する脈管をシーリングデバイスで処理して、可能な限り早く脾臓を摘出しました。

麻酔下では、不整脈が持続的に出現しており、やはりリスクの高い状態でしたが、無事に手術を終えることができました。

術後は順調に回復し、2日後に元気に退院しました。


術後病理組織診断:脾臓の血管肉腫

転移病変は認められず、ステージ分類ではステージⅡに該当します。

一般的には、ドキソルビシン(1mg/kg/3week)による補助的化学療法を検討します。

参考:脾臓の血管肉腫のステージ分類

ステージⅠ 局在性脾臓血管肉腫

ステージⅡ 血腹症を伴う(破裂した)局在性脾臓血管肉腫

ステージⅢ 転移を伴う脾臓血管肉腫


無事、元気に生活できるようになりましたが、残念ながら予後は悪く、今後は転移しないことを祈りながら生活をサポートできればと思います。


以上です。

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