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執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

犬の内視鏡生検とリンパ腫

更新日:2021年8月2日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、犬の内視鏡生検で診断したタンパク漏出性腸症と消化器型リンパ腫(高分化型、低悪性度)について紹介します。


タンパク漏出性腸症とは

血漿タンパクやリンパ液が消化管粘膜から漏出してしまうことで、慢性の下痢や嘔吐、体重減少などがみられます。

原因としては、腸リンパ管拡張症や消化器型リンパ腫などがあり、血液検査で総タンパク質やアルブミンが低値になることで診断されます。

治療は、低脂肪食やステロイド、免疫抑制剤、抗菌薬などがあります。


消化器型リンパ腫(高分化型、低悪性度)とは

主に胃や腸管にTリンパ球由来の腫瘍細胞が上皮向性に浸潤することによって慢性的な下痢、嘔吐、体重減少、低タンパク血症などが見られ、進行すると全身症状から亡くなる場合があるため、早期診断・早期治療が重要で、診断には内視鏡検査もしくは開腹下で消化管の全層生検が必要です。


ここで症例を紹介します。

症例:ボストン・テリア、12歳、避妊♀、4.6kg

主訴:他院でタンパク漏出性腸症を診断後、治療するが、下痢と体重減少、低アルブミン血症が治らない


来院時には既にステロイドや免疫抑制剤、食事療法を行っており、症状が改善せず、進行していることから、消化器型リンパ腫が隠れている可能性を考慮する必要がありました。


便検査:腸内細菌叢のうち桿菌の割合が多く認められた

血液検査:重度の低タンパク血症(TP:2.9 g/dL、Alb:1.3 g/dL)と軽度の肝障害が認められた

エコー検査:びまん性に腸管粘膜の肥厚と高エコー化が認められた、腸間膜リンパ節の腫大は認められなかった

この時点では診断が得られないため、全身麻酔下で内視鏡検査に進むことになりました。

ただ、低アルブミン血症が重度であり、命に関わる状態なので、早急にアルブミン補充療法と下痢に対する治療による状態改善を先行しました。


内視鏡検査:内視鏡は食道、胃、十二指腸の上部消化管へアプローチし、肉眼的な評価と生検を行い、肉眼上では十二指腸粘膜の全体的にリンパ管拡張所見を認めた


病理組織検査:低悪性度消化器型リンパ腫(十二指腸粘膜において上皮向性に小型リンパ球の浸潤を認めた)


治療:メルファラン(7mg/m2/5日間/21日間隔)とプレドニゾロン(0.5mg/kg/1日おき)、食事療法、支持療法


この病気は、診断に内視鏡検査が必要であるため、内視鏡のある施設でないと対応が難しくなります。

今回は、来院時に重度の低Alb血症が認められ、命に関わる状態でしたが、飼い主様と相談の下、速やかに対応でき、隠れていたリンパ腫を見つけることができました。

長く治らなかった下痢も治まり、今後は治療を継続して元気に過ごして貰えるようサポートできればと思います。


以上です。

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