こんにちは。
ハーブ動物病院です。
今回は小型犬で時折起こる橈尺骨遠位の骨折について紹介します。
術中写真が苦手な方は、注意して下さい。
橈尺骨とは
前腕の肘から手首までを構成する2本の骨(内側:橈骨、外側:尺骨)をいいます。
小型犬の骨折でも比較的多い橈尺骨の骨折は、さまざまな治療法があり、術後の合併症も起こり得る厄介な病気です。
小型犬では骨の周りの筋肉や皮下脂肪などの軟部組織が薄いため、血流量が多くありません。そのため、術後の回復に問題が生じ、骨折部位の癒合不全や骨萎縮など合併症が起こる可能性があり、手術方法の選択と術後管理には注意が必要です。
ここで、症例を紹介します。
症例:ポメラニアン、8ヶ月齢、♂、2.8kg
主訴:左前肢の強い疼痛、完全挙上、跛行
x線検査:左側橈尺骨遠位で横骨折を認めた
治療法はいくつかありますが、飼い主様にそれぞれに利点・欠点をご理解頂いた上で、治療法を決定しました。
治療:ピンニング法+ギプス固定、PRP(多血小板血漿)療法
この症例は筋肉が硬直しており、骨折の整復に苦労しました。
このような若齢の小型犬の橈骨は、扁平骨で薄いため、慎重かつ丁寧な技術が要求されます。
ピンニングを終えた後、簡易的にかつ無菌的に作成したPRPを0.5㎖ほど、骨折部位に漏れないように注射して閉創し、ギプス固定しました。
PRPには、骨や軟部組織などの修復に働く成長因子を豊富に含んでおり、小型犬で時おり問題となる癒合不全などのリスクを減らす目的で行いました。
当院では通常、手根から肘関節を含むギプス固定を2-4週間行い、その後は短く調整して、固定を続けます。その間、ギプスによるうっ血や皮膚障害に注意しながら、積極的に歩行させて経過観察をします。
↓
x線検査(術後):尺骨も含め、骨折部位が整復されていることを確認
x線検査(術後4週):順調に骨折周囲に仮骨形成を認めた
骨癒合が十分となり、術後6週目で抜ピンを行いました。
同時に去勢手術と残存乳歯の抜歯も行いました。
念のためギプス固定を1-2週間継続します。
x線検査(術後6週):完全な骨癒合を認めた
今後は無事元の生活に戻れると思われます。
以上です。
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