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過密な生活環境は、FIV陽性猫の予後を悪化するかもしれない



近年、国内の飼育状況では、意外にも猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回っているようです。

テレビでも猫ブームは感じられますよね。


最近では、知らない人に対してでも尾を垂直に挙げ、頭を擦り寄せて挨拶してくれる人懐っこい猫ちゃんが多くなった様に感じます。

どうしても嫌われがちな僕ら獣医師にも、ごろごろ喉を鳴らして甘えてくる猫ちゃんには、とても癒されます。笑

たくさん愛情を受けて飼われているので、やはり猫ちゃんの性格にもいい影響があるのでしょうね。


さて、今回は猫に多い病気、感染症の中でも猫エイズウイルス(FIV)について、飼育環境がどうやら予後を悪化させるかもしれないという報告を紹介したいと思います。


そもそも猫エイズウイルス(FIV)とは?

HIVと同じレトロウイルス科レンチウイルス属に分類されます。

FIVは、ネコに特異的なウイルスであり、犬や人に感染することはありません。

主な感染経路は、猫同士のケンカなどによる接触感染や出産時の母子感染が挙げられます。

疫学的には、国内の屋外猫におけるFIVの保有率は23.2%程度と言われています。

FIVそのものを根治する治療法はなく、免疫不全による二次感染や一般状態を改善するための対症療法を行うのが一般的です。


一見怖い猫エイズウイルスですが、実は、FIV陽性ネコと陰性ネコの平均寿命に有意差はない、と報告されています。

人のエイズウイルスでも同様の認識かと思います。


上記の通り、FIVを過度に恐れる必要はありませんが、全く気にしなくていいかというとそういうわけでもないようです。


ここで、「過密な生活環境が、FIV陽性猫の予後を悪化するかもしれない」という内容の報告を紹介します。


「Contrasting clinical outcomes in two cohorts of cats naturally infected with feline immunodeficiency virus (FIV)」


異なる飼育条件下で飼育されているFIV自然感染猫の2つのコホートを調査


グループ1(n=17):屋内のみで2匹以下で飼育

グループ2(n=27):屋内のみで60匹を超える大きな家で飼育


グループ1:大半は、22か月の観察期間中に免疫不全と一致する臨床徴候を示さなかった。

グループ2:猫の17/27(63%)は、体重減少がみられ、研究期間中に死亡した。死亡率の最も一般的な原因はリンパ腫だった。


この研究報告によると、FIVに感染した猫を過密状態に保つことは、特にすでに感染している猫の場合、病気の進行のリスクに大きな影響を与える可能性があることが示唆されています。


猫にストレスを与える因子の一つに多頭飼育がありますが、もともと群れて生活する動物種ではなかったため、例えば、相性が悪い猫同士が同じ屋根の下で生活するとなると悪影響が出てしまう様です。


実際に猫に多い猫下部尿路疾患の最も多い原因は、同居猫の存在や不適切なトイレ環境などによる何らかのストレスであるという報告もあります。


いかがでしたか?


一見マイペースでのんびり屋な一面が可愛い猫ちゃんにも猫同士におけるストレス社会はあり、それによって感染症は悪化するのかもしれません。

目を覆いたくなる様な多頭飼育の現状もたまにニュースで見かけますが、QOLをよくするための飼育環境は猫にとって、とても重要です。


猫のためにも、過度な多頭飼育はやめたほうがいいのかもしれません。


埼玉県川口市のハーブ動物病院より

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