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小動物の麻酔リスクの評価とは



近年、獣医療の進歩や飼い主様の意識の向上によって、より多くの病気が治療されるようになり、それに伴い、麻酔処置もより身近に行われるようになりました。

例えば、避妊・去勢手術など病気の予防として行う手術や、治療として行う手術、歯の健康を保つための歯石除去、診断として行うCT・MRI検査など、日常診療の様々な部分で麻酔処置は用いられます。


小動物といえども、家族。麻酔に対して、心配になるのは当然ですよね。


僕ら獣医師は、治療するメリットが、治療するリスクを上回るかどうかを客観的に判断し、飼い主様にもご理解頂けるようなるべく根拠に基づいてご説明する必要があります。


今回は、主に犬や猫、ウサギの麻酔リスク評価について、2018年の報告を引用してご紹介したいと思います。


「The ASA Physical Status Classification: What Is the Evidence for Recommending Its Use in Veterinary Anesthesia?-A Systematic Review.」


(要約)

『犬、猫、ウサギ、ブタを含む258,298頭の合計15の前向きおよび後向き観察研究を分析。


麻酔後24時間(犬)と72時間(猫とウサギ)以内の麻酔関連死のリスクについて、ASA-PS≧Ⅲは、ASA PS<Ⅲと比較して、犬で3.26倍、猫で4.83倍、およびウサギで11.31倍だった。また、ASA PS≥IIIの犬と猫は、麻酔中に重度の低体温を発症するリスクが2.34倍だった。


シンプルで実用的なASA分類は貴重な予後診断ツールであることが示されており、麻酔後24-72時間の麻酔による死亡リスクの増加、および重篤な術中低体温症のリスク増加を特定するために推奨できる。』


上記の報告にあるように、「ASA分類」は、予後と関連があるとされていて、麻酔リスクを評価する上で有用であり、多くの動物病院で用いられています。

次に、ASA分類についてご説明します。


「ASA分類」とは?

アメリカ麻酔科学会における全身状態分類(ASA-PS)です。

身体検査や一般的な術前検査から全身状態を把握し、5段階に分類します。


ClassⅠ:健康かつ特に疾病がない

ClassⅡ:健康だが、局所性疾患のみもしくは軽度の全身性疾患を有する

    例)膝蓋骨脱臼、皮膚病など

ClassⅢ:重度の全身性疾患を有する

    例)発熱、貧血、脱水など

ClassⅣ:重度の生命の関わる全身性疾患を有する

    例)心不全、腎不全、肝不全、重度の貧血など

ClassⅤ:手術の有無によらず、24時間生存が期待できない瀕死の状態

    例)多臓器不全、ショックなど


当院でも、このASA分類を用いて、麻酔前の評価を行うことにしています。

これにより、飼い主様と獣医師が麻酔リスクについて認識を共有することができますし、全身状態を把握することによって適切な麻酔処置を行うことにもつながります。


いかがでしたか?


当院では、麻酔処置を含む様々な一般外科に力を入れています。

ご不明な点や不安に感じた部分があれば、持ち帰らずにお気軽にお聞き下さい。


埼玉県川口市のハーブ動物病院より

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