猫のFIPと治療薬モラヌピラビル
- ハーブ動物病院スタッフ
- 2024年11月1日
- 読了時間: 2分
更新日:2024年12月14日
こんにちは。
ハーブ動物病院です。
猫の伝染性腹膜炎(FIP)とモラヌピラビル
猫のFIPは、コロナウイルスの強毒株により、ほぼ必ず亡くなるほどの致死率が高い感染症です。
今までは特に予防薬や治療薬がありませんでした。
最近では、注射薬や経口薬で有効性が認められる報告が増えています。
当院では、有効性が十分確認されず、非常に高価な治療薬について、導入を見送っておりましたが、最近では、FIPの治療薬の有効性や安全性に関する、信頼性のある報告がいくつか出てきており、比較的安価で、ご自宅でも継続可能の経口薬モラヌピラビルについて、当院でも導入することになりました。
ここで症例を紹介します。
症例:猫、2歳、♂、3.5kg
主訴:食欲低下
症例は、発熱しており、その原因精査のため、各種検査を行いました。
エコー検査:腹水貯留
腹水は肝臓周囲、膀胱周囲の領域で評価します。
さらなる検査のため、粘稠度の高い腹水が抜去されました。
貯留液検査:滲出液(明らかな細菌や腫瘍細胞は認められず)
腹水のFCoV遺伝子検査:陽性(腹水に猫コロナウイルスが検出)
血液検査:高グロブリン血症(6.2g/dL)
診断:FIP
治療:モラヌピラビルの内服
症例は、迅速に診断され、可能な限り早く治療を開始することができました。
治療はすぐに奏功し、発熱は治り、元気、食欲も回復、腹水は消失しました。
その後、治療は終了し、再発は認められず、元気に過ごしています。
FIPは、致死性で、治療薬がなかった頃、経験上でも全例が亡くなっておりましたが、この症例は治療が奏功し、元の生活に戻れたことはとても感動します。
報告では、20-30%程度は、治療に反応しないとあり、さらなる研究とそれにより救われる命が増えることを切に願います。
以上です。