犬の会陰ヘルニア
- ハーブ動物病院スタッフ
- 2024年10月20日
- 読了時間: 3分
こんにちは。
ハーブ動物病院です。
今回は、犬の会陰ヘルニアについて紹介します。
※術中写真が掲載しています。苦手な方はご注意下さい。
会陰ヘルニアとは
多くの場合は、雄性ホルモンの影響により、会陰部(肛門周囲)の筋肉が萎縮し、筋肉間に隙間ができ、腹腔内の臓器がその隙間に脱出する(ヘルニア)疾患です。
肛門周囲の痛みのない腫れに気づくことが多いですが、症状として、直腸が脱出すれば、便秘が起こり、膀胱や前立腺が脱出すれば、尿道閉塞が起こるため、時には命にも関わる怖い病気です。
治療には内科療法、外科治療があります。
対症療法:便秘に対する緩下剤や摘便など
外科治療:脱出した臓器の整復とヘルニア孔閉鎖
ヘルニア孔閉鎖の術式には様々な方法があります。
代表例)自己組織による閉鎖(総鞘膜、内閉鎖筋、浅臀筋など)、人工材料(チタンメッシュ、プロリーンメッシュなど)による閉鎖
上記のヘルニア孔閉鎖とともに、去勢手術と開腹下で結腸固定、精管固定などを組み合わせることで再発率を低下させます。
もともと会陰部の筋肉は著しく萎縮しているため、術後の再発もあり得ます。
病態が進行すると、さらに会陰部の筋肉は萎縮し、手術の難易度が上がり、合併症率や再発率も増加するので、可能な限り早期に手術することが重要です。
ここで症例について紹介します。
症例1
Mix犬、3.4㎏、14歳、両側にヘルニア孔があり、腸管や膀胱が脱出
既往歴:慢性腎不全 ステージ2
治療:有茎状総鞘膜フラップ、チタンメッシュ(TiFプレート)、仙結節靭帯を用いた会陰ヘルニア整復、去勢手術、結腸・精管固定
手順は下記の通りです。
1.去勢手術
2.開腹下で結腸と精管固定、総鞘膜を転位して閉腹
3.有茎状総鞘膜フラップ、仙結節靭帯を含む周囲筋肉の縫縮でヘルニア孔の閉鎖
4.チタンメッシュを縫合固定した後、閉創
症例2
Mix犬、3.5㎏、15歳、両側にヘルニア孔があり、腸管や膀胱が脱出、排便排尿困難
既往歴:慢性腎不全
治療:無茎状総鞘膜フラップ、チタンメッシュ、仙結節靭帯を用いた会陰ヘルニア整復、去勢手術、結腸・精管固定
手順は下記の通りです。
1.去勢手術、総鞘膜の確保
2.開腹、結腸と精管、前立腺固定、閉腹
3.無茎状総鞘膜フラップ、仙結節靭帯を含む周囲筋肉の縫縮でヘルニア孔の閉鎖
4.チタンメッシュを縫合固定した後、閉創
症例3
トイプードル、9.8㎏、14歳、右側の会陰ヘルニアが再発し
ヘルニア孔の周囲筋組織は重度に萎縮しており、膀胱が脱出
治療:浅臀筋フラップ、仙結節靭帯を用いた会陰ヘルニア整復、結腸・精管固定
手順は下記の通りです。
1.開腹、結腸と精管、前立腺固定、閉腹
2.再発例であるため、筋組織が重度に萎縮しており、ヘルニア孔が大きく浅臀筋フラップ、仙結節靭帯を含む周囲筋肉の縫縮でヘルニア孔の閉鎖して閉創
1歳未満での去勢手術は、このような厄介な病気の予防にとても有効です。
去勢手術しないリスクとして、このような病気があることは知る必要があります。
以上です。