top of page
執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

犬の糖尿病とクッシング症候群

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は犬の糖尿病とクッシング症候群について紹介します。

糖尿病とは

インスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖(血糖)が異常に増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きがあります。

糖尿病は主に下記に分類されます。

・ 1型

膵β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る

・2型

インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある

・他の疾患に伴うもの

 膵外分泌疾患

 内分泌疾患

 肝疾患

 薬剤や化学物質によるものなど

治療は、インスリン療法が主体になり、症例に合わせて輸液療法や内服、食事療法、生活環境の見直しを行います。

治療が遅れると糖尿病性ケトアシドーシスとなり、危篤状態になりかねません。


糖尿病性ケトアシドーシスとは

インスリンが欠乏すると、生体内に酸性のケトン体が蓄積されます。

治療が遅れると、次第に生体内が酸性に傾くアシドーシスになります。

高血糖の症状に加え、脱水やアシドーシスによる低血圧および頻脈、嘔吐、意識障害などを呈する極めて危険な状態となります。


クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とは

犬のクッシング症候群は、副腎皮質ホルモンが過剰となった状態で、多飲多尿や肥満、肝障害、脱毛や皮膚の石灰化、血栓症などを引き起こす内分泌疾患です。

犬は他の動物種に比べ、発生率が高く、やや高齢で発生します。

自然発生の原因として、下垂体腫瘍(90%)によるものと副腎腫瘍(10%)によるものに分類されます。

治療には、副腎から分泌されるホルモンの合成を阻害する内科治療(トリロスタン療法)、下垂体腫瘍に対する放射線治療、下垂体腫瘍もしくは副腎腫瘍に対する外科治療がありますが、ほとんどは内科治療が選択されます。


ここで症例を紹介します。

症例:トイプードル、11歳、去勢♂、3.4kg

主訴:けいれん発作(3分以内の短い強直間代発作が3回)が起きてしまった

てんかん重責は脳に致命的な損傷を引き起こしかねない緊急的な状態であるため、即座に診断と治療を行う必要があります。


身体検査:血圧や不整脈はなく、可視粘膜や意識レベルは正常

まずは原因が頭蓋内か頭蓋外かを調べる検査と血管ルートの確保を進めます。


血液検査:重度の高血糖(>600mg/dL)と肝障害(ALT:155U/L、ALP:>3500U/L)


仮診断:糖尿病性ケトアシドーシス

初期治療:入院下でインスリン療法、抗てんかん薬、静脈内点滴

この段階では糖尿病性ケトアシドーシスかそれに近い状態であり、院内でもけいれん発作が起きたため、即座に治療を開始し、状態が安定した後に必要に応じて検査を行いました。


エコー検査:副腎両側性に腫大、胆泥重度、肝腫大


ACTH刺激試験:post >28µg/dLで陽性

T4(甲状腺ホルモン):1.4µg/dLで正常


診断:下垂体性クッシング症候群に伴う糖尿病

クッシング症候群は稀に糖尿病を併発することがあり、インスリン不耐性の原因となるため、要注意です。

血糖管理のため、最大で14日間血糖値を連続測定できるFreeStyleリブレを装着しました。

一度外れると再使用できないため、動物に外されにくい位置に装着し、管理する必要があります。


治療:トリロスタン療法とインスリン療法、肝庇護薬、食事療法


血糖管理も順調で、再診時にはすっかり元気になっておりました。

今後は継続治療と経過観察が必要ですが、元気に過ごせると思います。


以上です。

閲覧数:2,312回

最新記事

すべて表示
bottom of page