周術期とは麻酔をかける手術の前から後までの期間を表します。
当院の周術期の加温システムについて検討するにあたり、人の周術期の体温管理について調べ、まとめてみました。
重箱の隅をつつくようですが、意外と大事な内容です。
まず、犬や猫の体温について、概ね37.5-39.1℃と我々に比べ、高めです。
来院時には緊張や興奮によって、自宅内より高めに測定されます。(なるべくリラックスさせてあげたいですが…)
健常では、恒温動物は平均体温が維持されていますが、手術中などの麻酔下(周術期)では体温が低下するのが一般的であり、程度によっては悪影響を及ぼすと言われています。
周術期の低体温の代表的な影響因子は、
・麻酔薬による再分布性低体温
・体温調整中枢の抑制
・体温に比べ、冷たい室温や手術台
などが考えられます。
特に重要な再分布性低体温とは、麻酔薬により血管が弛緩し、熱が放散した結果、核心温が低下することです。麻酔下では体温調整の中枢も抑制され、また、ふるえによる熱産生も起きず、低体温傾向となります。
周術期の低体温が与える影響として、
・創傷治癒の遅延、感染リスクの増加(人:「低体温で術創感染のリスクが3倍に上昇」)
・心血管系のリスク増加(術中の徐脈や術後シバリングによる酸素消費量の増加)
・出血量の増加(凝固能の低下による出血傾向)
などが考えられ、これらによって術後の回復も長期化すると人では言われています。
周術期の低体温対策には、
・温風式加温システムの使用
・麻酔時間の短縮
・洗浄液の加温
・輸液製剤の加温?やアミノ酸輸液製剤の投与
などが挙げられます。
体温の90%は体表を通して失われると言われており、皮膚を温めることで保温できると考えられます。
温風式加温システムが推奨されていますが、低温やけどには要注意です。
加温の適正範囲は、およそ43-46℃です。
人では術前から加温するほうが、低体温のリスクが下がると報告されてますが、動物ではなかなか難しそうです。
温風式加温システムは、雑に表現すると医療用の布団乾燥機とでもいいましょうか、医療用とつくだけで標準価格40万円以上です。医療用はなんでも高いです…
ちなみに、点滴に用いる輸液製剤の加温は実際計算してみると、加温効果はほぼないようです。(電気の無駄遣いといっても過言ではないかもしれません…)
まとめると、温風式加温システムを使用し、適切な温度で可能な限り広範囲の体表を加温することと可能な限り麻酔時間を短縮することが大切ということでした。
以上です。
埼玉県川口市のハーブ動物病院より