こんにちは。
ハーブ動物病院です。
今回は、マイクロブタの免疫介在性血小板減少症について紹介します。
術中写真が掲載されています。苦手な方はご注意下さい。
免疫介在性血小板減少症(IMTP)とは
免疫系が止血に働く血小板を破壊してしまう病気です。
血小板は25000個/μLを下回るほどに減少すると、全身で自然出血が起こり、重要な臓器の中で出血が重度になると機能不全により亡くなるリスクがあります。
原因不明の場合が多いですが、ワクチンや薬剤、その他感染症や腫瘍が原因となって続発する場合もあります。
治療は、主にステロイドや免疫抑制剤、脾臓摘出、輸血などがあり、必要に応じて併用し、薬の用量を調整しながら3−6ヶ月間以上の継続治療を行うことになります。
ここで症例を紹介します。
マイクロブタ、3ヶ月齢、4kg
主訴:全身の皮膚に紫斑がある
一般身体検査を行い、特に大きな外傷もなく、皮下の自然出血が疑われるため、血液検査を行いました。
血液検査:重度の血小板減少(16000個/μL)、単球増加(1200個/μL)、グロブリン軽度増加(4.8g/dL)
診断:免疫介在性血小板減少症
治療:プレドニン(1mg/kg/sid)、モフェチル(15mg/kg/bid)、胃粘膜保護剤、制吐剤、肝庇護剤、外傷による出血予防のため隔離と安静
治療は特に大きな問題もなく1週間後の再診時には改善しておりました。
血液検査(治療1wk後):血小板(323000個/dL)、軽度の貧血
半年間ほど内科管理を行いましたが、薬剤強度を漸減すると、再燃してしまう傾向が認められました。
ご相談の上、さらなる治療効果を期待して、脾臓摘出を行うことになりました。
治療:脾臓摘出
内服薬を数日間事前に休薬する期間を設けた上で、実施しました。
犬や猫と同じように、全身麻酔下で、開腹し、高エネルギーデバイスを用いて、慎重に血管処理を行い、脾臓を摘出しました。
マイクロブタの脾臓摘出は、解剖学的に、胸が深く、脾臓が背側に位置しており、また、微細な血管がとても豊富であるのにも関わらず、それらを覆う被膜がとても薄く、脆弱なので、腹腔外に脾臓を牽引することが難しく、犬や猫に比べて、難易度がとても高いように感じます。
病理組織検査:脾臓萎縮部の出血と繊維化
病理組織検査の結果から、本症例の血小板減少は、脾臓内の出血が原因と思われます。肉眼的な脾臓の所見を踏まえると、外傷で出血が生じたとは考えにくく、脾臓内の出血の原因は不明です。
術後は特に大きな合併症はなく、爪などに出血斑、疼痛反応が一時的に認められましたが、血小板減少は改善し、内服薬を使わなくても再燃することなく、根治しました。
以上です。