猫のびまん性虹彩メラノーマ
- ハーブ動物病院スタッフ
- 2月3日
- 読了時間: 2分
こんにちは。
ハーブ動物病院です。
今回は猫のびまん性虹彩メラノーマについて症例を紹介します。
猫のびまん性虹彩メラノーマ(FDIM)とは
異形成メラノサイトの増殖からなる色素過剰病巣として始まり、虹彩表面に平らな茶色の斑点として現れます。
この初期病変は、良性の前駆病変で、メラノーシスと言われます。
病変の挙動は予測不可能で、静止したままか数か月から数年かけてゆっくりと、もしくは急速に進行することもあります。
虹彩メラノーシスから初期のFDIMへの移行は、異形成メラノサイトが虹彩間質に侵入するところでのみ組織学的に認識可能と言われており、早期の腫瘍診断ができない主な要因です。
FDIM は虹彩から周囲に浸潤し、最終的に強膜を貫通します。その過程で、虹彩肥厚、瞳孔異常、瞳孔可動性低下、続発性緑内障などが起こります。
腫瘍は前眼房内で剥離し、眼房水を介して、強膜静脈叢に侵入、眼球外に転移します。転移性は比較的高く、肝臓、肺、腎臓、脾臓、リンパ節、脳、骨等に起こります。
治療は、外科的な眼球摘出のみ有効性があります。
予後は、癌の進行度により大きく異なり、より早期で治療し、転移が起きなければ、長期生存が期待できます。
ここで症例を紹介します。
症例:猫、9歳、避妊♀、3.8kg
主訴:他院様からのご紹介、右眼の虹彩が黒く、不整に腫れている
すでに他院様で検査を行い、緑内障が認められていました。
一般状態は良好で、転移所見も認められていません。
一般眼検査を行い、メラノーマを強く疑い、緑内障も呈していることから、飼い主様とご相談し、眼球摘出を行うことになりました。
治療:眼球摘出
高エネルギーデバイスを用いて、出血を抑えながら、周囲の筋組織、脈管系を処理して、腫瘍組織が残存しないよう慎重に眼球を一括して摘出しました。
術後は疼痛管理を主に行い、特に大きな合併症は認められませんでした。
病理組織診断:猫びまん性虹彩メラノーマ(完全切除)
異型性は高度、有糸分裂像は稀、脈管内浸潤は認められず
症例は、緑内障や癌による疼痛が消え、抜糸時には、診察室で甘えてきてくれるほどの活動性を見せてくれました。
眼球外への浸潤はなく、完全切除できていることから、今後他院様で転移が起きていないかの経過観察をする予定ですが、長生きしてくれることを願っています。
以上です。