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犬の直腸脱と多中心型リンパ腫

更新日:2021年2月21日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は犬の直腸脱と多中心型リンパ腫について紹介します。

直腸脱とは

肛門から直腸が反転して脱出してしまった状態です。

原因は、腸重積、重度の下痢としぶり、高齢のメスに多い肛門括約筋の緩みなど様々です。

治療は、必要に応じて結腸固定術や肛門の巾着縫合、原因の除去を行います。


多中心型リンパ腫とは

血液中の免疫機能として働く白血球のうちリンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞)ががん化したもので、造血器腫瘍の83%を占め、主に中高齢に発生します。

発生部位は、リンパ節に加え、腸管、皮膚など全身のあらゆる場所に発生する可能性があります。

獣医療において、リンパ腫は発生部位によって5つの型に分類されます。中でも多中心型は、最も多く、主に複数のリンパ節が同時に腫瘍化するタイプです。

症状は、初期で無症状か無痛性リンパ節腫大が見られますが、進行するにつれ、食欲不振、体重低下、嘔吐・下痢、多臓器不全が見られます。

診断には、細胞診、エコー検査、胸部X線検査、血液検査、病理組織診断(切除生検)や遺伝子クローナリティ検査等を行います。

治療は、化学療法が最もよく行われ、孤立性の局所病変には、外科切除や放射線治療が適応となる場合があります。


ここで症例を紹介します。

症例:柴犬、避妊♀、12才、9.6kg

主訴:排便後の肛門がおかしい、首にしこりがある、元気・食欲あり


身体検査:軽度の直腸脱(非嵌頓)と体表リンパ節腫大

体表リンパ節が腫大しており、腫瘍性病変かどうか検査を進めます


院内細胞診(針生検):主に中型のリンパ球が多量


エコー検査:腹腔内リンパ節腫大、脾臓不均一に腫大、一部の小腸壁不均一に腫大


血液検査:ALP軽度上昇、リパーゼ上昇

リンパ球クローナリティ解析:Bリンパ球のモノクローナルな増殖


診断:B細胞性多中心型リンパ腫 ステージⅤa


治療:L-CHOP療法(19週間)と必要に応じて直腸脱の治療

この症例は化学療法が著効し、早期に直腸脱も起こさなくなりました。

腫瘍に対する治療経過も順調で、元気・食欲を維持しつつ、好中球減少が起きる程度に薬剤強度を上げることができています。

リンパ腫が原因で直腸脱が続発した比較的稀な病態でしたが、今後も予後を改善できるよう継続治療を行う予定です。


そして無事、早期に完全寛解を得て、再燃することなく21週間で化学療法を遂行することができました。

途中、グレード4までの有害事象が起きましたが、大きな問題になることはありませんでした。

今後は再燃しないことを祈るばかりです。


以上、犬の直腸脱と多中心型リンパ腫についてでした。

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