猫の肺指症候群

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、猫の肺-指症候群について、紹介します。


猫の肺指症候群とは

猫の肺指症候群は、さまざまな種類の原発性肺腫瘍(特に気管支および気管支肺胞腺癌)で見られる四肢の遠位指骨への異常な転移パターンを言います。

複数の指と複数の手足への転移が一般的で、典型的な症状は、指の腫れと赤み、爪床からの化膿性分泌物による疼痛です。

他の転移部位には、皮膚、目、骨格筋および骨、その他複数の胸部および腹部臓器が含まれ、これらの病変は、腫瘍からの直接的な動脈塞栓から生じると考えられています。

この症候群の猫の予後は一般に深刻であり、平均生存期間はわずか58日という報告があり、原発巣である肺腫瘍や転移巣の外科切除による明らかな生存期間の延長は期待できないとされています。


ここで症例を紹介したいと思います。

症例:猫、 アメリカンショートヘア、12才、4.5kg

主訴:前足が痛そう

身体検査:右前肢の疼痛反応、収縮期心雑音を聴取


x線検査:左肺後葉に肺腫瘤を認めた


血液検査:慢性腎不全ステージ2

心エコー検査:肥大型心筋症、LA/AO<1.5


仮診断:肺腫瘍の右前肢第三指への転移、慢性腎臓病ステージ2、軽度の肥大型心筋症


治療方針:緩和目的でトセラニブ2.2mg/kg/週3日、cox-2阻害薬通常の半分量、皮下点滴、降圧薬など


治療経過:右前肢第三指はx線検査上、骨融解を認め、腫大し、左上眼瞼や、体表部に新たに転移と思われる病巣が出現し、トセラニブによる有効性が確認できず、中止

通常、指への転移は複数であることから外科切除による疼痛緩和効果は乏しいとされていましたが、この症例の場合は、右前肢第三指のみの疼痛による跛行であったため、疼痛緩和を狙って断指術を行いました。また、左上眼瞼腫瘤増大による角膜潰瘍を予防する目的で同時に左上眼瞼腫瘤も切除しました。


治療:右前肢第三指と左上眼瞼腫瘤の外科切除



麻酔リスクとしてASA class 4/5に該当するため、慎重に手術を行いましたが、周術期の合併症を起こすことなく、終えることができました。


術後は順調で、特に足の疼痛がなくなったことにより、トイレの砂かきもできるようになりました。



当院では、エビデンスを基に、ケースバイケースで動物のための治療を心掛けております。

転移巣を有する猫の肺腫瘍の治療は困難であり、今後の獣医療の進歩に期待するほかありませんが、可能な限りQOLを維持、向上する治療を続けていく予定です。

以上です。

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埼玉県川口市のハーブ動物病院