こんにちは。
ハーブ動物病院です。
今回は猫の漏斗胸について紹介します。
漏斗胸とは
漏斗胸とは胸郭の一部が陥没している生まれつきの病気です。
陥没の程度にもよりますが、胸壁が肺および心臓を圧迫するために、心肺機能はやや低下します。
重症度が低ければ、無治療経過観察を、中等度から重症であれば、6ヶ月齢までに矯正手術を行うか検討する必要があります。矯正手術が成功すれば、呼吸状態は大きく改善します。
ここで、症例を紹介します。
症例:猫、ベンガル、♂、4ヶ月齢、1.8kg
主訴:漏斗胸があり、呼吸が荒くなる時がある
漏斗胸の重症度を評価するために、検査を進めます。
x線検査:漏斗胸中等度
(臨床重症度スコアCSS:1-2/5、前矢状面指数FSI:2.18、椎骨指数VI:7.87)
<参考>
FSI 軽度:<2、中等度:2-3、重度:>3
VI 軽度:>9、中等度:6-9、重度:<6

臨床重症度スコアが比較的軽度ではありましたが、x線検査時にも呼吸が早くなってしまい、解剖学的な重症度では中等度に分類されていたため、矯正手術を検討しました。
治療:漏斗胸の矯正手術
漏斗胸を矯正する手術は最近改良を繰り返されており、より低侵襲に、より効果的になっているようです。
今回は陥没した胸骨を牽引した上で、骨折で使うプレートを理想的な胸郭のラインになるように曲げ、それを最も陥没している胸骨と左右の肋骨に縫合固定を行い、矯正しました。
元々胸郭は狭く、肺が膨らむスペースが少ないため、麻酔導入時にチアノーゼを起こしましたが、想定通りに対応して安定化しました。
矯正手術後も安定していたため、同時に去勢手術も行いました。
x線検査(術後):胸郭が広がっていることを確認

術後は矯正によるものなのか疼痛反応が見られましたが、呼吸状態は安定、食欲もあったので、翌日に退院することができました。
今後は定期的な経過を見て問題なければ、プレートは留置したままとします。
この術式を考案して頂いた先生方のおかげで、当院でも対応することができました。
漏斗胸で苦しむ動物がより少なくなればと思います。
以上です。