こんにちは。
ハーブ動物病院です。
今回は、犬の肺腺癌について紹介します。
肺腺癌とは
原発性肺腫瘍は比較的稀ですが、中でも肺腺癌が一般的です。
臨床徴候として、元気食欲低下、発咳、呼吸促迫、体重減少などがあります。
随伴症候群として、跛行を伴う肥大性骨症があります。
治療として、主に外科切除が有効です。転移のない孤立性の腫瘍に対して、最大で肺全葉の2/3まで切除可能で、術後化学療法も有効です。
肺葉切除の合併症として、気胸、出血、胸水、DICなど、周術期の致命的なリスクが数%程度と報告されています。
予後因子として、臨床徴候、腫瘍の種類、肺門部での発生、腫瘍の大きさ、転移などが挙げられます。
ここで、症例を紹介します。
症例:ゴールデンレトリーバー、11歳、避妊♀、36kg
主訴:呼吸が荒い、活動性低下。
一般状態の把握と胸部x線検査を行い、原因を精査します。
x線検査:左肺の中央領域に腫瘤性病変を認めた。
血液検査:特に異常を認めず。
x線検査で、肺腫瘍の可能性が高く、さらなる診断と治療計画のためCT検査に進みました。
CT検査:左肺後葉に一部石灰化を伴う腫瘤性病変(8cm大)を認め、肺腫瘍が第一に疑われる。転移所見は認められず、腫瘍から隣接する肺葉への気管支までの距離は、1cm程度確保されることから外科切除が適応と判断される。
治療:左肺後葉の外科切除
全身麻酔下で、左第6肋間開胸によりアプローチしました。
大型犬種でのため、気管支は横径1.4cm程度あり、脈管系もとても太く、慎重に高エネルギーデバイスとチタンクリップを併用して、処理し、左肺後葉を一括切除しました。
胸腔ドレーンを設置して、閉胸しました。
術後翌日には元気、食欲も問題なく、術後3日間は数時間に一度、空気と10cc程度の胸水が抜去されましたが、問題なくドレーンも抜去されました。
その後、大きな合併症もなく、抜糸し、元気に日常生活に戻ることができました。
病理組織診断:肺腺癌(完全切除)
異型性は高度で、有糸分裂像は散見、一部で脈管内浸潤も認められる
病理検査の結果から、術後補助的化学療法を検討する必要があります。
ひとまずがん性疼痛から解放され元気に過ごせるようになり、良かったと思います。
以上です。