犬の結腸の肥満細胞腫

更新日:3月8日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、犬の結腸腫瘍について紹介します。

術中写真を掲載しています。苦手な方は注意して下さい。

犬の消化管腫瘍では、リンパ腫、腺癌、平滑筋肉腫、GIST、肥満細胞腫などが胃や小腸、大腸に発生する可能性があります。

小腸は十二指腸、空腸、回腸の、大腸は盲腸、結腸、直腸の総称です。

リンパ腫を除く大腸の腫瘍では、小腸と比べ、外科切除による治療で、予後の改善する可能性が高くなります。

外科切除の合併症には、術後の腸管麻痺、縫合部位の癒合不全、感染、出血、腹膜炎などがあります。特に癒合不全には注意が必要です。

縫合創の治癒過程は、術後3日までが縫合部位の張力は弱く、その後線維芽細胞の働きで次第に強くなり、7日間で癒合が完成、12日頃には最も強くなると言われています。

つまりその間は、注意深く看護する必要があります。


ここで症例を紹介します。

症例:チワワ、13才、♀

主訴:内科治療に改善せず、血便が続く

便検査:特に異常を疑う微生物等は認められず


一般的な血便や下痢などでは内科治療で改善することがほとんどであり、そうでない場合は背景に別の疾患が隠れている場合があり、注意が必要です。

消化器に異常がないか検査を進めます。


エコー検査:結腸に腫瘤と内腔の狭窄を認めた、その他異常認められず


針生検による細胞診:肥満細胞と間葉系の細胞がごくわずかに採取された

血液検査:BUN軽度上昇、ALP軽度上昇


診断:孤立性の結腸腫瘍(T1N0M0)


治療:外科切除

  (盲腸を含め正常組織を含む腫瘍組織の広範囲切除後、回腸と結腸の端端吻合)

開腹下で病変を見ると、腸重積の状態でした

内腔で癒着しているのか、硬固に狭窄しており、重積は完全に元には戻りませんでした

結腸の腫瘤は盲腸膵臓左葉に近接していました

その他、リンパ節の腫大などの異常は認められませんでした

腸管膜動静脈や膵臓左葉を温存しつつ、慎重に切開ラインを確保しました

悪性腫瘍が予想されるので盲腸などの正常組織を含む両端4-5cmのマージンとしました

回腸と結腸の吻合径が合うように離断する必要があります

吻合部のリークテストで一切の漏出がないことを確認できました

全体像で血行や肉眼上の病巣などの問題がないことを確認して腹腔内に戻し、

生食で丁寧に腹腔内洗浄をした後、閉創しました

術後の合併症として腸管麻痺による食欲低下と下痢が見られましたが、

補助的な給餌、輸液などの対症療法を行い、食欲は次第に回復しました


術後病理組織検査:肥満細胞腫(クリアマージン)

異型性は中程度から高度で、間質は線維化しており、脈管内浸潤や切除縁、漿膜面で腫瘍細胞は認められない


消化管の肥満細胞腫では、約半数で間質が線維化するという報告があり、今回の症例のように針生検での細胞の採取が難しい場合があるかもしれません。


内臓型肥満細胞腫の中でも消化管の肥満細胞腫は予後が悪いという報告と病理組織検査で異型性が高いことから補助的化学療法が推奨されます。


補助的化学療法:トセラニブとビンブラスチン併用化学療法

肥満細胞腫で有効性のある抗がん剤にはビンブラスチンやロムスチン、分子標的薬のトセラニブなどがあります。

予後が比較的悪いグレードⅡ-Ⅲの肥満細胞腫のこれまでの報告をまとめると、奏功率は単剤で30-70%程度、トセラニブとビンブラスチン併用で70-90%程度と、単剤より多剤併用の方が有効性が高くなることが示唆されています。


この症例は、結果的に早期発見・早期治療ができました。

今後は補助的化学療法を行うかもしくは定期的な検診を行いながら、元気に生活できるようサポートできればと思います。


以上です。

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