敗血症による重度肺炎と心タンポナーデ

最終更新: 1月26日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、シニア猫で、口腔内の細菌が全身性に波及し、敗血症となって重度の肺炎と心タンポナーデを呈した症例について紹介します。


心タンポナーデとは

心臓と、心臓を覆う心外膜との間には、わずかに潤滑油として働く液体(心嚢液)が存在します。心タンポナーデとは、心嚢液が様々な原因で異常に貯留することによって、心臓のポンプ機能に障害をきたしている状態です。

心タンポナーデは、ふらつきや失神など緊急性を要する場合もあり、迅速な診断と治療が重要で、通常は心エコー検査によって診断されます。


原因は下記に分類されます。 1 )特発性:原因不明 2 )感染性:ウイルス性、細菌性、真菌性による心膜炎 3 )非感染性:悪性腫瘍の心膜浸潤など 4 )外傷性:交通事故など


ここで、症例について紹介します。

症例:猫mix、14歳、去勢オス

主訴:呼吸困難、元気消失、食欲廃絶、起立困難、他院にてステロイドを内服しているが、状態悪化傾向

既往歴:数年前に抜歯歴があり、その際にリンパ節腫大と状態悪化が見られた


瀕死の状態で緊急性を要することから状態把握のためレントゲン検査を実施しました。

レントゲン検査:肺全葉で不透過性亢進、胸骨リンパ節腫大、心臓拡大

上記のように、心臓が異常に拡大しており、さらなる状態把握のため心エコー検査と血液検査を実施しました。 血液検査:白血球↑、グロブリン↑、BUN↑、猫エイズ、白血病ウイルス陰性

心エコー検査:心タンポナーデ

レントゲン検査では大きいか小さいかという情報に比べ、エコー検査ではどのように大きいのか、筋肉が肥大しているのか、心嚢液が溜まってるのかまで多くの情報をリアルタイムで把握できるメリットがあります。


心エコー下で、心嚢液を針で穿刺して吸引し、ポンプ機能の障害を取り除くと同時に、貯留液検査を実施したところ細菌が認められたため、細菌培養同定薬剤感受性試験を実施しました。


診断:Neisseria.sp(口腔内の常在菌)による敗血症、細菌性肺炎、細菌性心タンポナーデ

細菌は口腔内の常在菌でしたが、歯周病から全身性に波及したものと推察されます。感受性試験はほぼ全ての抗生剤に対して感受性が認められました。


治療:膿性心嚢液の穿刺吸引、呼吸困難改善のため、酸素室下で安静、多剤併用で抗生剤投与、ステロイド漸減、皮下点滴など

耐性菌が出現しないよう多剤併用で抗生剤を投与しました。

その後、状態は急激に回復し、元気食欲も出てきました。


治療後のレントゲン検査:肺野良好


今回の症例では、14歳と高齢の猫にして極めて状態が悪い状態で来院されましたが、迅速かつ適切な検査と診断、治療から予想外に劇的な回復をしてくれました。


近年、獣医領域でも抗生剤乱用による多剤耐性菌出現が問題視されている中で、細菌同定と薬剤感受性試験を行うことによって、耐性菌ができないよう適切な治療へとつなげることができました。


今は体重も元に戻り、太りつつあるとのことで一安心です。


以上、敗血症による重度肺炎と心タンポナーデの症例についてでした。

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埼玉県川口市のハーブ動物病院