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犬の両側の膝蓋骨脱臼(パテラ)

更新日:2022年3月18日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は小型犬の膝蓋骨脱臼について、紹介します。

手術中の写真を掲載しております。苦手な方はご注意ください。


膝蓋骨脱臼とは?

膝蓋骨は英語でpatellaであり、膝蓋骨脱臼がパテラと簡易的に言われることもあります。

関節を構成する骨同士の関節面が、正しい位置からズレてしまう状態を”脱臼”と言います。


膝蓋骨脱臼は、膝のお皿、膝蓋骨が膝関節内で正しい良い位置からズレてしまう状態です。

通常であれば、膝蓋骨は、大腿骨遠位の滑車溝という溝にはまっており、屈伸運動を潤滑にサポートしています。

膝蓋骨が内側に外れる”内方脱臼”、外側に外れる”外方脱臼”があり、内方脱臼のが多いです。

うまれつきの”先天性”と、高いところから落ちたなどの”外傷性”にわかれます。

発症が”両側性”である場合も決して少なくありません。

また、オスよりメスが罹患する場合が多く、これは女性に罹患率の多い人でも同じらしいです。


脱臼の評価は、触診によるグレード分類が用いられます。

グレードⅠ 膝蓋骨は手で脱臼できますが、手を放すと元に戻る

グレードⅡ 膝蓋骨は膝を曲げると脱臼し、膝を伸ばしたり、手で元に戻る

グレードⅢ 膝蓋骨は絶えず脱臼し、手で元に戻りますが、放すと再び脱臼する

グレードⅣ 膝蓋骨は絶えず脱臼しており、手で戻すことはできない


生涯を通して無症状の場合もあれば、歳をとるにつれ、症状が出たり、悪化したり、合併症を伴ったりする場合もあります。


治療は、手術と内科治療があります。

高齢の場合は、筋肉の萎縮や健康状態によって、内科療法が選択される場合がありますが、根本的に問題が解決されるわけではありません。

膝蓋骨脱臼のグレード高いほど、年齢が高いほど、前十字靭帯断裂を併発するリスクがあるという報告があることから、後肢を挙上する、跛行がある等の痛みの徴候がある場合は、若くて健康なうちに整復手術を行うことが推奨されています。



ここで症例を紹介します。

症例:マルチーズ、5歳、6kg、去勢♂

主訴:左後ろ足が痛そう


触診:膝蓋骨内方脱臼、右側グレード2,左側グレード3、ドロワーサイン陰性


x線検査:股関節異常認めず、脛骨やや内旋


診断:膝蓋骨内方脱臼(右側グレード2、左側グレード3)


治療:滑車溝造溝と関節包縫縮(両側同時)

これまでの報告をまとめると片側ずつ行うか両側同時に行うかで、インプラントの損傷や再脱臼などの合併症率は大きくは変わらず、およそ20%です。

この症例は、体重制限を先に行いつつ、一回の治療期間で済むように両側同時に手術しました。

滑車溝は浅く、一部脱臼時の摩耗による軟骨膜の損傷が認められます。

滑車溝の軟骨膜を遠位まで剥離して、滑車溝を丁寧に造溝した後、軟骨膜を元に戻します。

屈伸運動時に再脱臼が起きないことを確認し、膝蓋骨両側で関節包を切開します。

切開を加えた膝蓋骨両側の関節包同士を縫合して関節包縫縮を行った後に閉創します。


この症例は両側同時に手術を行いましたが、術後1週間で早くも走り回れつつあります。

術後の回復は年齢やグレード、性格によりさまざまですが、比較的早期に回復しやすい術式で行っております。

術後は1ヶ月ほど安静を保ちつつ、徐々にお散歩の時間を増やす等していきますが、体重制限の継続は重要です。


最近では膝蓋骨脱臼によって痛みの徴候が繰り返し認められる小型犬の来院数も少なくなく、手術で治療することも増えてきております。


膝蓋骨脱臼によって、日常的に痛みが認められる場合には、今後の対応について内科治療で痛みを緩和するのか手術で根治的に治療するのかご相談頂ければと思います。


以上です。

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