top of page
執筆者の写真ハーブ動物病院スタッフ

頭頸部リンパ節郭清した猫の皮膚アポクリン腺癌

更新日:2023年10月28日

こんにちは。

ハーブ動物病院です。


今回は、術後半年ほどで頭頸部のリンパ節に転移した猫の皮膚アポクリン腺癌の症例について紹介します。

アポクリン腺とは

汗腺の一つで、においやフェロモンを出す役割があります。汗腺には他にエクリン腺があります。動物と人とではその分布が逆転しており、汗を促すエクリン腺が多い人に対して、犬や猫では少なく、汗をかきにくいと言われています。

アポクリン腺癌は、このアポクリン腺が腫瘍化したもので猫では稀、挙動や予後の報告は少ないのが現状です。


ここで症例を紹介します。

症例:猫、ベンガル、4kg、10歳、去勢♂

主訴:首にしこりがある


既往歴:半年ほど前に当院で下顎に発生した皮膚アポクリン腺癌(病理組織診断:完全切除、脈管内浸潤認めず、細胞異型高度)を外科切除


腫大したしこりは両側の下顎リンパ節であり、既往歴にアポクリン腺癌があるため、針生検含む転移と全身状態のチェックを行いました。


細胞診:腫大した下顎リンパ節からは前回と同様の上皮系細胞集塊を認め、リンパ節転移が疑われた

エコー検査:両側の下顎リンパ節と内側咽頭後リンパ節が腫大、内部も不均一であり、リンパ節転移が疑われた

x線検査:胸部は異常を認めず

血液検査:大きな異常を認めず


治療:両側の下顎リンパ節、内側咽頭後リンパ節郭清

現状、遠隔転移は認められず、全身状態も良好であるため、頚部皮膚正中に単一の切開をして両側の下顎リンパ節、内側咽頭後リンパ節にアプローチ後、重要な血管神経系を損傷させないよう慎重にリンパ節郭清を行いました。

術後は下顎両側に浮腫と軽度の鳴き声の変化が認められましたが、大きな合併症は認められませんでした。


病理組織診断:アポクリン腺癌のリンパ節転移(摘出した4つのリンパ節の内大きい3つ)


皮膚のアポクリン腺癌の報告は少なく、有効な化学療法も未知ですが、飼い主様とご相談の上、肺転移を抑える目的で術後化学療法を行うことになりました。


術後化学療法:カルボプラチン(150mg/m2/3wk)、トセラニブ2.3mg/kg/eod、支持療法


今後は定期的に転移のチェックを行いつつ、化学療法を行う予定です。

以上です。

閲覧数:155回

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page