とある調査によると、46%の飼い主が、「グレインフリーのドッグフードは健康にいい」と思っていると回答しました。
グレインフリーが健康にいいというのは、食物アレルギーや消化の面でのイメージかと思います。
皆様はいかがでしょうか?
健康を維持するのに、食生活が重要であることは僕ら人間も含め、言うまでもありませんが、やはり正しく解釈する必要はあるかと思います。
今回は、「グレインフリー」が果たしてそれほど健康にいいのか?ということについて、獣医師の立場から解説したいと思います。
そもそもグレインとは?
イネ科植物(米、麦、トウモロコシなど)の種子を指します。
グレインフリーとは、これらの穀物を含まないと言う意味ですね。
また、グルテンフリーという言葉もあります。よく混同されますが、ちょっと意味が違います。
グルテンとは、穀物の麦から抽出された純粋なタンパク質のことを指します。
もともとグルテンフリーとは、人のセリアック病(小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応によって起こる自己免疫性の消化器疾患)に対して作られました。
犬や猫では、人のセリアック病はありませんので、グルテンフリーをアピールするメリットはあまりないでしょう。
※稀ではありますが、ボーダー・テリア(てんかん様発作)やアイリッシュ・セッター(グルテン過敏症)ではグルテンに対する免疫反応を起こす個体がいるため、その場合は、グルテンフリーが推奨されます。
では、犬と猫の食物アレルギーの最も一般的なアレルゲンが何かをみてみましょう。
「Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (2): common food allergen sources in dogs and cats」
犬と猫で、食物アレルギーのアレルゲンを多い順に並べると、
犬(297例):牛肉(34%)、乳製品(17%)、鶏肉(15%)、小麦(13%)および子羊(5%)
猫(87例):牛肉(18%)、魚(17%)、鶏肉(5%)
と報告されています。
食物アレルギーに関して、牛肉や鶏肉に比べ、グレインによるものは少ないのです。
食物アレルギーに配慮するのであれば、「グレイン」より「牛」や「鶏」ということになりますね。
次に、消化不良に関してはどうなのか。
一般的に大手メーカーから発売されたペットフードに含まれるグレインは適切に調理されており、消化不良を起こすことなく、問題がないことがわかっています。
ネットでよくあるグレインのデメリットは、実はそれほどデメリットではないのです。
逆に、グレインフリーのフードでよく見られる、豆類などの炭水化物を多く含むフードでは、犬(特にゴールデンレトリーバー)のタウリン欠乏症および拡張型心筋症との関連を示唆する報告もあります。
いかがでしたか?
特に既往歴がない場合は、グレインフリーにこだわる必要はないのかもしれません。
慢性的な皮膚のかゆみや下痢などのペットの症状に悩まれている方は、まずは獣医師とご相談されることをおすすめします。
どうぞお気軽にご相談下さい。
埼玉県川口市のハーブ動物病院より